文字サイズ

国産木材の魅力
木材利用の意義

テーマ 2

人と環境は「木で繋がる」

森林の役割

日本の国土面積は3,780万ヘクタール、そのうちの66%(2,505万ヘクタール)が森林で構成されています。森林は、木を中心とする多くの植物、そしてその環境に生きる様々な動物や微生物など、多くの生き物に生息の場を提供しています。また、森林は地上だけでなく、栄養が不足する海にも河川を通じて栄養を与え、海の生態系を支える役割を担っています。

このように生態系や環境を「繋ぐ」役割を担う木が、伐採・製材されてからも、人、モノ、暮らしなどを繋げてくれる役目を担っています。

異業種との連携による新たなアイデア創出

林業や木材産業においては、数多くの「組合」や「団体」等が存在し、それぞれが森林資源の保全や森林生産力の増進に取り組んでいます。
東京の檜原村では、村面積の93%が森林という地域性と、檜原村で生産される木材をもっとPRしたいという想いから、2018年「檜原村木材産業協同組合」を発足しました。檜原村の森林資源の活用という目的に向かって、林業会社や製材所、加工会社だけでなく、森林空間内での体験サービスや建築会社など、異業種を交えた幅広い連携を行い、村の木材産業の活性化に取り組んでいます。

官民や地元企業同士の連携に加えて、木材利用に積極的な企業との「協業」も広がりを見せています。たとえば檜原村で生産されたスギを使って和太鼓を開発した事例です。東京浅草にある祭礼具や邦楽器などを製作販売する株式会社宮本卯之助商店と、森林の整備や管理、木材や木材製品の販売等山仕事を行う株式会社東京チェンソーズが協力し、檜原村のスギを使って桶太鼓「森をつくる太鼓」を製作しました。一般的にはスギの「柾目板(丸太の中心付近を切断し、直線に近い真っ直ぐな木目模様が現れる板材)」で作られる桶太鼓を、今ある素材を活かすという観点から「板目材(丸太の中心からずれたところを切断し、曲線混じりの木目模様が現れる板材)」や間伐材などを使用して制作することにより、板目材の美しい木目が現れ、資源を有効活用した太鼓が完成しました。

「森をつくる太鼓」宮本卯之助商店と東京チェンソーズがコラボレーションして制作:イメージ
「森をつくる太鼓」宮本卯之助商店と東京チェンソーズがコラボレーションして制作

木材産業と異業種及び異分野とのコラボレーションの流れは全国に広まりつつあります。例えば、大手コーヒーチェーン店では、テーブルなどの店舗什器に、店舗周辺の地域材が積極的に活用されています。大手ファストフードチェーン店では、店舗で提供するカトラリーを木製品に切り替えました。他にも、ヒノキなどのエッセンシャルオイルから芳香剤やウエットティッシュなど製作したり、木から作られた布やお酒など、様々な木材製品が開発されています。

また、建築分野においてもあらためて木材が注目されています。新国立競技場や高輪ゲートウェイ駅など、世界的建築家の隈研吾氏が会長を務める一般社団法人 日本ウッドデザイン協会が主催する「ウッドデザイン賞」では、木材を利用したイノベーション・新産業創出に寄与する作品を表彰しています。建築基準法の改正や耐火部材の開発等により、中大規模の木造建築物への関心も高まっています。

このように、木材が新たなアイデアや用途で利用される機会が増え、木材に注目する企業や団体も増えつつあります。

「国立競技場」47都道府県から調達した⽊材を使⽤:イメージ
「国立競技場」47都道府県から調達した⽊材を使⽤

前述の檜原村木材産業協同組合および東京チェンソーズ代表の青木代表理事は「組合では林業と製材所だけではなく、異業種間の連携を大事にしています。同業者だけでは生まれてこない発想や、新たな価値観の発見に繋がります。檜原村の森林に興味を持ってくれた協業相手からも、木材の新たな活用方法のアイデアをいただけます。なかには、われわれの固定観念を取り払うような提案もあります。」と語ります。

地元での人と人の繋がり、地元企業同士の連携による繋がりをはじめ、地域や業種の枠を超えた多種多様な業種との共創など、様々な人が関わることで木材の可能性が広がりつつあります。森林や木材は人の交流を「繋げる」役割を果たしているのです。

「檜原村木材産業協同組合の青木代表」木材の可能性を語る:イメージ
「檜原村木材産業協同組合の青木代表」木材の可能性を語る